2013-12-31更新:光学系はこちらに修正版があります

IGS(情報収集衛星)が初めて打ち上げられた時(2003年3月28日のH2A-F5)に、ポンチ絵と松浦さんからの情報で想像図と3Dデータを公開してから7年。IGSも実証型も含めて6機の打ち上げに成功しています。1号機に関しては想像図でほぼ正しいはずなのですが、昨年打ち上げ(2009年11月28日のH2A-F16)られている光学3号機(もしくはその前の光学3号機実証衛星)からは松浦さんの情報では光学型は全く異なる形状と衛星バスになっているようです。にも関わらずニュース等ではまだ古い第1世代の時の3Dデータが使われているようですので新世代のデータに更新することにしました。画像も3Dデータも著作権表示して頂ければ自由にお使い頂けます。なお今回の形状を考える上でTwitterでの宇宙クラスタでの議論も大変参考になりました。(まとめサイト)。宇宙クラスタの皆さまありがとうございました、その時の内容は一応反映したつもりです。第1世代IGSの頃に比べると良い時代になったなぁ。


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第2世代光学型はIKONOS(イコノス)に似た6角柱の下に円筒が付き6角柱の上部から太陽電池パネルが3枚の構造との情報があります。これに似た衛星バスは日本には存在しないはずなので、新たに第2世代光学型のために開発されたのでは無いかと思えます。なぜIKONOS似の形状に変更したのでしょうか?光学型の必要条件を考えると納得できる面があります。IKONOSに似た形状の光学衛星は他にも存在します。例えばTacSat-3ORS Sat 1等。このレイアウトはある意味必然なのかもしれません。

光学型とはつまり地上を見る望遠鏡を搭載した衛星と言うことになります。解像度を上げるには大きく2つの要素が必要となります。つまり長い焦点距離と大きな口径です。この2つの要素をコンパクトなサイズで実現しようとした場合には反射型望遠鏡が最適となるでしょう。すばる他の望遠鏡でも通常は反射型になっています。それを従来の衛星バスで実現しようとするとバランス的にも構造的にも無理があります。望遠鏡(光学センサー)部を中心に配置したIKONOSは無理や無駄が無い構造なのでしょう。

更に光学型はパッシブ(受動)型のセンサーなので、電力もアクティブ(能動)型センサーが必要なレーダー型に比較して電力も少なくて済み、太陽電池の必要枚数も少なくても良いことになります。また高分解能を実現する上では振動も少ない程良いのですが左右に伸びた太陽電池パドルは振動を生じやすいと考えられます。それに対して3枚羽の配置だと振動も収束しやすいと言う話もあるようです。つまりこれもIKONOSの構造が理想と言うことになり、結論としてIKONOS似になるのは自然な流れと考えられます。

第1世代のIGSでは時間が足りない問題もあったはずですし、そもそもがベースとしてALOSの光学センサーを改造した為に、従来の衛星バスを使ったと思われます。しかし時間も経ち開発期間があったことを考えると、そもそも光学型に必要な要素を検討しなおした結果IKONOS似の形状に落ち着いたのでは無いでしょうか。ただしここで書いたのは幾つか情報があるにしても推測の部分も多く必ずしも正しいとは限りません。その点はご理解頂いた上でCGを見たり使ったりして頂きたいと思います。特に細部に関しては全て私の推測であり「らしく」見せる為の方便と考えてください。


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レーダー型に関しては第1世代として作成したCGが、ALOS2と太陽電池パネルの枚数を除けばほとんど同じであることから推測して、ほぼこのレイアウトが正しいのでは無いかと考えています。レーダーを発信する大きなパネルが下部に必要な点と、大電力が必要な点からあまりレイアウトに選択の余地が無いのかもしれません。今回は第2世代用として第1世代のモデルから太陽電池パネルの枚数だけ減らしてみました。衛星バスはUSERSと同じものかその系列でおそらく日本では一番利用されている衛星バスになると思います。なおレーダー型IGSの形状は全くの推測ですのでこちらも参考程度と考えてください。おそらくこうだろうと言う推測形状に過ぎません。

一番怖いのは間違った形状でミスリードしてしまうことです。最近では地上から衛星やISSを直接撮影している例も多く、ISSの宇宙飛行士と思われる映像まで撮影した例もあります。IGSも地上からの逆偵察により大雑把な形状(レイアウト)が分かると確実性が増すだろうと思えるのですが...どなたか挑戦されませんか?おそらく軌道要素はどこからか提供してくれる人もいると思うのですが。テーマは「IGSを逆偵察しよう!」と言うことで(^^;

偵察衛星は軌道上にある衛星の性能だけでは無く地上での分析能力も必要となります。IGSの運用も長く行われているので分析能力に関してもノウハウが蓄積され向上していると期待したいものです。光学3号機の運用に合わせてその辺りも増強されると言う話もあるようです。IGSの開発や運用の予算は日本の宇宙開発予算の中で大きな割合を占めているのですから無駄にしないことを期待します。公表されなくても良いので他の宇宙開発プロジェクトにノウハウやデータがフィードバックされると良いですね。

と言うことで再び松浦さんP-ISLAND.COMの著作権で画像と3Dデータを公開します。本投稿に利用されている画像や以下のモデルファイルは報道や雑誌/書籍等での利用も含め著作権表示頂くことで自由にお使い頂けます。利用に当たってはGNUのCopyleftに準じますので必要なら改変して再公開して頂いても構いません。よろしければお使いください。

 第2世代 情報収集衛星 LWO形式3Dデータ:393Kバイト

最後に第1世代のIGSの時の画像も再掲載しておきます。これはちょっと太陽電池パネルの数が多すぎたかもしれないと反省してます。各種TVや雑誌等で利用して頂けました。ありがとうございました。今後は新しい方をご利用下さい。


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追伸:光学3号機が軌道を外れているような記述があるサイトがありますが根拠が薄いしミスリードになる可能性があるのでここでは取り上げません。あしからず。

[2010-02-08追記] 水城さんにお願いしてコメントを貰いました。「両型ともSバンドを使うことになると思います。Sバンド用アンテナには様々な形がありますが、直径10cmくらいの円盤または正方形のパネル、という形状で地球側面または側面に張られることになると思います。多分ハイゲインアンテナではなく、ただの平たい形状だと思います。ディテールアップするなら、GPSアンテナと太陽センサの追加くらいでしょうか。光学型は新規開発バスなので、問題が起きたときの非常モードとして太陽志向スロースピンの姿勢制御モードを持っていると思いますが、そのためには太陽センサが必要です。ただ、太陽センサは最悪、電力系から切り離した小さな太陽電池の切片を衛星構体のあちこちに張って、それぞれの発生電力を測ってベクトルを合成するだけでも結構な精度が出るので、目立つ部品ではありません。レーダー型は、スタートラッカはALOSのように扇形の配置のほうがそれらしいかも知れません。」とのことです。なお内容は一部抜粋しています。う~ん勉強になるなぁ。出来れば修正したいところですが…