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X-1やX-15に比べると無人であったり結局飛翔せずに終わったり、同時期にベンチャースターのプロトタイプであるX-33があったりと、影が薄いX-34です。でも個人的にはお気に入りの機体です。

オービタル・サイエンシズX-34は平行してロッキードマーチンで開発されていたX-33の方が注目度が高かった為にどちらかと言えば地味な印象がありますが、個人的には手堅い設計と現実的な選択とで非常に注目していた機種です。 X-33は革新的な技術を盛り込んだ実験機であり、もし成功していればX-33を大きくしたベンチャースターが誕生したはずでしたが、その革新性ゆえに数々の問題を生じていました。 X-34は対照的に現在既にある技術を積み重ねる事で低コストを実現する目的で開発されており、実際に予算規模もX-33では総額で9〜10億ドル近かったのに対して、X-34では6000〜9000万ドルに過ぎません。なおX-33もX-34もあくまで実証実験機であり宇宙機そのものの開発では無く、その意味では形状は似ていてもスペースシャトルとは位置付けが異なりますので注意が必要です。 NASAは2001年3月にX-33/34計画のキャンセルを発表しました。これは既にある程度の成果が得られていた為でもありますが、再利用型の宇宙機開発のレベルには達していなかった点も見逃せません。スペースシャトルの後継機には当然のこととして再利用型の宇宙機をあげていたNASAとしては苦渋の決断だった事でしょう。

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さて話をX-34に戻しましょう。 X-34は低コストで再利用可能な機体を開発する基礎技術の蓄積が目的としてスタートしました。なぜ開発元がオービタル・サイエンシズ社なのかと言うとやはり実用ロケットとして成功したペガサスロケットの実績が大きいでしょう。ペガサスロケットは空中発射の小型ロケットですが低軌道に対して衛星の打ち上げを安価に実現した実績があります。ペガサスロケットの空中発射母機であるトライスター(L-1011)はX-34の空中発射母機でもあります。乱暴に言えばペガサスロケットのエンジンを固体燃料から液体燃料に変更して再利用可能な機体としたものがX-34であるとも言えるでしょう。 X-34の主エンジンとしてはNASAマーシャルスペースフライトセンターが開発したファーストラック(Fastrac)が搭載されます。ファーストラックエンジンは燃料として液体酸素とケロシンを利用していますが、この組み合わせも実績がある選択であり無理が無い設計であると言えるでしょう。更にX-34は無人機ではありますがGPSを利用した安価なナビゲーションシステムを備えています。

さて実際にはX-34はどこまで開発が終わっていたのかと言えば、残念ながら最後まで単独飛行をする事無く終了しています。 X-34の最大高度は80kmでありマッハ8を目指していました。この目標値はほぼX-15と同等レベルと言って良いでしょう。つまりX-34は最新の技術でX-15同等レベルの機体を安価に再設計したとも言えます。 X-34のプロトタイプモデルは完成してお披露目され、1999年6月29日にテスト飛行の為に母機となるトライスターに搭載されまずは分離しないで行える試験を実施されましたが、その際に母機トライスター側の不具合が見つかり結局その後のテスト飛行はされないまま計画を終了しています。 せめてCGで飛翔している姿をご覧下さい。

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